よく言われる”建物構造と防音”の実態
集合住宅の防音性は、建物の構造によってある程度判断することができます。基本的には以下の図のような順番で防音性が高い構造と言われています。
これはあくまで、"基本"になります。
・木造(W造)
木造は通気性が高く、建設コストが低いので家賃相場も低くなっています。
しかし、通気性が高いということは防音性も低いということ。音が気になる人にはオススメしない構造です。
・鉄骨造(S造)
骨組みに鉄骨を利用した構造のこと。
工期が短く建設コストが低いので鉄筋コンクリート造(RC造)に比べると家賃相場も低くなっています。木造よりは防音性があると言われますが、実際はそこまで防音性に差がない場合も多いようです。
もちろん、木造も鉄骨も工法によっては比較的静かな場合の造りもありますが、一方では、咳払いや起床時の状況まで聞こえるという物件も多いのです。
・鉄筋コンクリート造(RC)
鉄筋コンクリート造(RC)は最も静かな構造で、躯体※建物を支える骨組み部分 がしっかりしていて、音が気にならない物件もあります。工費が掛かっているため、相対的に家賃の高いところが多いです。
しかし、これも完璧ではありません。鉄筋コンクリート造(RC)=周囲の音は全く聞こえない、と期待して引越しをするとギャップに苦しむ可能性があります。
というのも鉄筋コンクリート造(RC)にも工法がいくつかあり、大きくは柱や梁の枠だけ鉄筋コンクリートで建物を支える構造と、床や天井・隣室との壁まですべて鉄筋コンクリート造(RC)で作られている2種類です。
基本的にはRC造であればそれだけで周囲の音は聞こえにくくなりますが、後者の構造がより防音性が高いと言われます。しかし、壁や柱を通じた振動は伝わるため、上の階で飛んだり跳ねたりするとちゃんと振動が響いてきます。また、前者のような構造であると、鉄筋コンクリート造(RC)でも壁だけ石膏ボードと言う場合もあり、隣接している部屋からの声などが聞こえる場合もあります。
理想と現実のギャップを埋める
ここまでの内容を読んで『結局どこに住めばいいの?!』と思われた方もいらっしゃると思います。しかし、この記事で伝えたいことは"物件特性を理解し、何を選択するか"です。
例えば駅から10分の場所に家賃5万円と、30万円のマンションがあるとします。この2つの物件で同じ条件・環境を求める方はいらっしゃらないと思います。また、騒音問題は築年数だけで測れるものでもありません。そのため実際に内見をして、壁を叩いてみて厚さ・音の響きやすさを確かめることや不動産会社に相談することが大切。”クッションフロア”と謳っていても耐久性・防音性など用途は様々です。
すべて自分の希望に沿う物件を見つけることは難しいかもしれませんが、
『「静かな環境に住みたい」と思っているのに、木造のファミリー向け集合住宅を選ぶ。』
『動物が嫌いなのに、ペット可の集合住宅を選ぶ。』
これでは望む環境は得られません。
『安さ』で木造物件を選ぶのであれば、周辺の音が聞こえるということを予め理解しなければいけません。また、RC造だからと言って『全く音がしない』という先入観も、集合住宅に住む上では見直さなければなりません。
騒音トラブルを避けるために
内見をしっかりしても、不動産会社によく相談しても、その集合住宅をすべて把握できる訳ではありません。
しかし、最低限の物件と住人とのミスマッチを防ぐだけで、避けられるトラブルはかなりあります。前の例えでみると、ファミリー向け住宅に住んでいる子供のいる世帯は、子供の出す音を理解しているため他の家から出る音もある程度は気にしない傾向にあります。しかし、この住宅に“生活騒音を理由に前物件からの転居を決めた人”が入居したらどうでしょうか。どの程度をもって「静か」「うるさい」とするか、基準が異なる者が近隣同士となってしまうのです。
こうしたミスマッチが原因で生じる近隣トラブルは、往々にしてお互いの価値観が絶望的に異なるため平行線をたどることが多く、残念ながら解決が難しいケースばかりとなります。
そんな事態を避けるためにも、自分が譲れない条件は何なのか、妥協できる点は何なのか、この物件は自分に合っているのか等々。入居を決める前に判断材料をたくさん集めておきましょう。
もちろん希望にあった物件であっても、人の入替えなどにより状況は変わってくるかと思います。そんな時のためには、あらかじめ相談できる第三者を見つけておくことが肝要です。