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近隣トラブルは、事件になる前段階に適切な対処を行えば事件化を未然に防ぐことが可能です。

前回から始まった近隣トラブルが原因で起きた事件のご紹介、第2弾になります。

今回ご紹介するのは2016年5月に兵庫県尼崎市の路上で起きた殺傷事件についてお話していきます。

【目次】

■事件の概要 

2016年5月19日午後5時頃、兵庫県尼崎市下坂部の文化住宅付近の路上で起きた殺人事件。

隣住民から「60代の男が凶器を持って暴れている」と110番通報が入った。

同住宅1階の玄関先で、同住宅2階に住む被害者2名(母娘)はハンマーで殴打された後、包丁で複数回刺され、娘は死亡、母親も意識不明の重体となった。

加害者は「以前から2階の音がうるさく、何度注意してもおさまらなかった。殺すつもりだった」と供述していたという。

 

■殺人事件に至った背景とは

近所に住む男性によると「週に2~3日、3~4歳ぐらいの娘の子供(母親の孫にあたる)を母親の家に預けていた。母親は『下の人から子供がうるさいと言われる』と話していて、部屋に防音マットを敷き詰めるなどしていた」と話していたという。

加害者の騒音に対する抗議は事件の3年程前からあったと言われており、日ごろから頻繁に被害者宅へ訪れ、何度もクレームを言っていたという。

加害者と被害者が住んでいた文化住宅(アパート)は、木造の2階建て以下の集合住宅。構造が木造ということもあり、音のみならず振動も伝わりやすいため実際にある程度の音は聞こえていたであろうことが想像出来る。

事件当日、被害者の母親は買い出しのために外出しており、自宅には被害者娘と姉、娘の息子の3人がいた。

帰宅した母親が自宅前の路上で娘を呼んだところ、加害者が「でかい声出すな!」と怒鳴ったことから口論になり、事件に発展したといわれる。

■推測

人によってはとても気になる足音。マットを敷くなど対策を行っていたとの証言もあったが、敷いていたマットの種類が適切であったかどうかや、そもそも木造のアパートは振動や音が伝わりやすいということもあり、マットを敷いても音や振動は抑えることは難しい。

事件発生当時、加害者に対し「それならば引っ越せばいい」という声も多く上がっていたそうだが、60代(当時67歳)という年齢を考えても金銭面や体力面で容易に引越しが行える状況ではなかったのではないかと考えられる。

加害者側が騒音のクレームを入れるようになってから3年が経ってから起きた事件。路上での口論をきっかけに、今まで積もっていた感情が、敵意、憎悪となって一気に溢れだし殺傷事件になったことが想像できる。

■まとめ

今回取り上げた事件では「殺すつもりだった」という発言があり、事件の発端こそ道端での口論ですが、ある程度の計画性はあったのかもしれません。

三年前から続いたトラブルということですが、音や振動が響きやすく、対策をしても一定以上の効果は望めない木造住宅の特性をお互いどこまで理解していたのか、長期化するうちに音の問題よりも相手の言動のほうが気になってはいなかったかなども気になる点です。

また、木造や軽量鉄骨住宅の場合はどう配慮してもある程度の生活音が聞こえてしまいますが、特に子供がいる家庭と音を気にする居住者が隣接した場合のミスマッチで起こるトラブルは、長期化する傾向があります。難しいことではありますが、例えば物件選びの時点から、音で近隣に迷惑をかけそうな場合は2階以上を避ける、静かな環境を求めるのであればファミリー物件や木造は避ける、などで避けられる場合もあるのです。

そして実際のトラブルが起こってしまった場合、当事者同士の話合いでは、一方向側の主張をし続け「相手が是正すべきだ」という思い込みにより、トラブルが長期化してしまう可能性があります。

感情が高ぶってしまう前の早期の段階で、第三者を挟んでお互いの妥協点を見つけ、適切な対処を行うことで防げた可能性のある事件であったと考えられます。

 

■株式会社ヴァンガードスミス

【事業内容】トラブル解決支援事業

【HP】https://v-smith.co.jp/